東京カメラ部10選、写真コンテスト入賞者の方々がEOS M3を手にお気に入りの撮影スポットへ小旅行に出かけてきました。小旅行の中で撮影された作品の美しさから、EOS M3ならではの持ち運びやすさ、画の美しさ、EFレンズの性能をフルに引き出せるポテンシャルの高さをご確認ください。
普段、キヤノンEOS 5D MarkIIIをメインに風景写真を撮っています。
瞬時に設定を変えることができる操作性、「光」をドラマティックに捉える画質などを重視して、EOS 5D MarkIIIを愛用していますが、撮影では多くの移動がつきまとうため、ミラーレス一眼で同等の画質を得られるのなら、それはとても喜ばしいことです。EOS M3はダイヤル類が充実し、露出補正やモード切り替えがタッチパネルからダイヤル操作に変わりました。そして、画素数は2420万画素を誇り、EOS 5D MarkIIIの2230万画素を凌ぎます。映像エンジンも「DIGIC 6」へと進化し、光の微妙な階調や色の違いも繊細に描写できるとのこと。ミラーレス一眼でフルサイズ一眼レフ並みの撮影ができるかもしれない。そんな期待を胸に、年に数回は足を運ぶお気に入りの場所、八丈島を訪れてみました。
Canon EOS M3・EF24-105mm F4L IS USM・1/640s・F8・ISO100 Photo by Chikako Yagi
昨年の9月から、離陸・着陸時も含め、飛行機内で常時撮影することが可能になりました。フライト中も絶好の撮影タイム。八丈島までのフライトは1時間弱でとても短いですが、ダイナミックな雲の切れ間から光輝く海を撮影することができました。飛行機の窓は紫外線対策が施されているからなのか、レンズにPLフィルターを装着すると光の状態によって虹色が出現するのです。このフライトでは、海面が美しい虹色となりました。PLフィルターは、風景写真では多用するフィルターですが、私にとっては飛行機からの撮影においても欠かせないアイテムです。
Canon EOS M3・EF-M 22mm F2 STM・1/160s・F8・ISO100 Photo by Chikako Yagi
八丈富士の「ふれあい牧場」では、愛らしい牛たちを間近で見ることができます。もちろん牛が写真の主役なのですが、このような写真を撮るときも、風景写真に大切な「雲の表情」や「空間」は意識します。雲は少々飛び気味ですが、それが淡いトーンを作り出し、のんびりと草をついばむ牛を愛らしく見せている気がします。使用レンズは「EF-M 22mm F2 STM」。コンパクトながら明るい単焦点レンズで、ガーリーな写真がとても撮りやすい印象でした。
Canon EOS M3・.EF-M 11-22mm F4-5.6 IS STM・1/200s・F11・ISO100 Photo by Chikako Yagi
濃厚な青空と緑。亜熱帯気候の八丈島は生命力いっぱいの自然が溢れています。ヤシの木、八丈富士、青空を1枚に収めるため、広角ズームを使い、F11まで絞り込んで撮影しました。撮影時は「風景モード」を選択し、RAW+JPEGで記録。JPEG撮って出しの画像が、RAW現像で作り込んだ画像に匹敵するくらいの発色で驚きました。緻密に描写されたヤシの木の葉にも目を奪われましたね。
Canon EOS M3・.EF-S 60mm F2.8 Macro USM・1/200s・F2.8・ISO200 Photo by Chikako Yagi
美しい花などに出会ったとき、できる限り接写をしたくなるもの。マクロレンズは旅に必携の交換レンズです。EF-Mレンズにマクロレンズはラインアップされていないので、「マウントアダプターEF-EOSM」を使い、「EF-S 60mm F2.8 Macro USM」を装着してみました。アダプター経由で使用してもAFは機敏。手ブレ補正付きレンズを使えば、もちろん手ブレ補正が有効になります。これは手持ちでの開放撮影でしたが、AF精度も良く、めしべを繊細に捉えてくれました。所有しているEFレンズをそのまま活かせるのは、キヤノン愛用者にはとても喜ばしいことですね。
Canon EOS M3・EF24-105mm F4L IS USM・1/20s・F22・ISO100 Photo by Chikako Yagi
通常、滝は生い茂った山の中などに存在することが多いですが、八丈島には海辺の崖に滝があり、今回の撮影のひとつのハイライトでした。というのも、ひらけた場所にある滝には日射しが直接射し込むため、虹を撮影できるからです。雲の多い天気でしたが無事に太陽が顔を覗かせ、狙い通りに虹を撮ることに成功しました。コツは太陽を背にすることです。カメラを構える高さによって虹が見える高さも変わるため、足場次第でうまく虹を配置した構図を作れません。また、PLフィルターを使うことで、より虹をはっきりと写すことができます。シャッタースピードは1/20。滝から落下する水をわずかに筋状にしています。高速シャッターの場合、水滴がはっきりと写るので、かなり印象が異なる写真になります。苔で足場の悪いなか撮影した、思い出に残る1枚です。ここでも、手ブレ補正は威力絶大で、小型のEOS M3に手ブレ補正付きのEFレンズの組み合わせは、とても相性が良いと感じました。
Canon EOS M3・EF-M 11-22mm F4-5.6 IS STM・1/500s・F8・ISO100 Photo by Chikako Yagi
夕焼けの撮影は、風景写真では定番の被写体。私もよく撮影します。空間が大好きなので広角レンズを使い余白を多く取ることが特徴的だと思っています。この日は強風だったため、三脚にしっかりとカメラを固定し、iPhoneのアプリ「Camera Connect」でリモート撮影。できる限りブレないように気をつけました。EOS M3ではレリーズケーブルが使えませんが、リモート撮影がそれを補ってくれます。余白を多く取った風景写真では、雲の配置もこだわる点。かなりの枚数を撮影した中から、八丈小島、雲、太陽のバランスが良い1枚をセレクトしました。RAW現像時にホワイトバランスを「日陰」にすることで、見た目よりも夕焼けをより濃厚にしています。
Canon EOS M3・EF-M 11-22mm F4-5.6 IS STM・30s・F4.5・ISO4000 Photo by Chikako Yagi
今回の撮影では最長の30秒の長時間露光をしています。このくらいの長時間露光になるとノイズがとても気になることがあります。そこで、EOS M3に搭載されている、「マルチショットノイズ低減」を使ってみました。RAWでの記録はおこなえませんが、4枚の画像を撮影し、カメラが自動で合成。高感度撮影時でも解像感を残したままノイズ低減できる機能です。4枚の撮影中、1枚が流星(写真右下)を捉えていて、後で確認をしていて驚きました。ISO4000という高感度撮影でしたが、それを感じさせないクリアな星空。暗部も潰れておらず、フルサイズと比較してもまったく引けを取っていません。星空だけではなく、状況も同時に伝えたかったので、広角ズームを使用しています。
Canon EOS M3・EF-M 11-22mm F4-5.6 IS STM・3.2s・F22・ISO100 Photo by Chikako Yagi
朝焼けの海を写した1枚です。とても朝日がまぶしく、普通に撮影をしてしまうと岩場が黒潰れしてしまうため、ハーフNDフィルターを使用して撮影しました。私はND9を使用しています。岩場のディテール再現、海面の階調ともに素晴らしいという感想。「水面の赤」「波の白」「岩場の黒」という3つをバランス良く撮るという狙い通りの写真になりました。EOS M3の画素数の大きさと「DIGIC 6」による階調表現の威力を感じた1枚です。
Canon EOS M3・EF50mm F1.2L USM・1/2000s・F1.6・ISO100 Photo by Chikako Yagi
EF標準レンズの定番「EF50mm F1.2L USM」も使ってみました。大口径かつ古くからラインアップされているレンズということで、どこか柔らかさの残る表現に。窓辺からのグラデーションも美しく捉え、窓の外の緑も飽和せずに描写してくれました。室内での撮影に積極的に使っていきたいレンズです。
Canon EOS M3・EF-M 11-22mm F4-5.6 IS STM・1/60s・F4.5・ISO200 Photo by Chikako Yagi
八丈島に生息する「ヘゴ」。亜熱帯の植物で、八丈島が世界で最北端の群生地。この「ヘゴの森」は私有地にあるため、ガイドさん同行のもと、許可を得て撮影させていただきました。ヘゴの木の大きさを表現するため広角レンズを使用。明るい空を背に構図を決める必要があり、EOS M3から使えるようになった電子ビューファインダーがとても役立ちました。やはり、背面液晶では明るい場所では見えづらいことがあり、電子ビューファインダーあってのEOS M3というくらいお気に入りのアクセサリーです。ヘゴの葉がわずかに透けるくらいの露出を狙っています。露出補正がダイヤルで行えること、ミラーレス一眼なので、記録される明るさがそのまま電子ビューファインダーで確認できるのも、一眼レフにはない大きな利点だと感じました。
EOS M3は、小さいながら充分な画質と操作性を持っています。レンズの資産も活用できますし、チルト式液晶があることによって、さらにアングルの自由度が増しています。事実、いつもの撮影よりもはるかに多くのシャッターを切っており、純粋に「楽しい」と感じました。EOS 50D、EOS 7D、EOS 5D MarkIIIと、キヤノンのデジタル一眼レフカメラを使っていますが、EOS M3は、ミラーレスとして初めて欠かせない存在になりました。
取材:鈴木文彦(snap!)
愛知県在住。
1997年頃からフィルム一眼レフカメラから写真を始め、2002年頃にデジタル一眼レフカメラに移行。
自然奏フォト名古屋に所属。写真家 辰野清氏、栄馬智太郎氏に師事。
風景写真をメインとしながらも、商品撮影・ポートレートなど幅広く撮影をしています。
信州・長野をはじめ東海地方、伊豆諸島などのさまざまな美しい自然風景の一瞬の出会いを心に残る一枚にしていきたいと思っています。
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